お米や小麦といえば炭水化物を連想しますが、たんぱく質も存在感は薄いですがちゃんとあります。お米に含まれるたんぱく質でいちばん多いのが「オリゼニン」というたんぱく質で、白米ではおよそ60~80%のたんぱく質が、このオリゼニンである、貯蔵たんぱく質としての役割を持っています。

オリゼニンは、でんぷんと違って、米粒の内部に均一に存在しているわけではなく、どちらかといえば周辺部に多く分布しています。特に米ぬかや胚芽(将来、イネになる部分)に多いので、白米よりも玄米の方が、たんぱく質の含量は多いということになります。一方、小麦に含まれるたんぱく質にはいろいろありますが、特にその含量が多いたんぱく質は「グルテニン」と「グリアジン」である。

この両たんぱく質で、小麦のたんぱく質のうち74%を占めます。小麦粉に水を加えないままでは、グルテニンとグリアジンの両たんぱく質は、それぞれが勝手気ままに存在した状態で、いわばお互い「知らん顔」をしているのです。ところが、ここに水を加えて混ぜ合わせることで、それまで「知らん顔」していた人見知りの両たんぱく質が、急に仲良くなるのです。

グルテニンは細長い千以上の形をしていて、一方グリアジンは球状です。この両者が混在するところに水を加えて混ぜ合わせると、小麦粉中のグルテニンとグリアジンが、お互いの表面で、疎水結合、イオン結合などを介して相互作用し、編み目状の構造を呈するようになると考えられています。

こうして、粘弾性の高い「グルテン」が形成される。これが、うどんやパンを作る際の、あの弾力性に富む「生地(ドゥ)」の基本となるのです。