顕微鏡の下で繰り広げられる「スター・ウォーズ」の世界。まさにそのような比喩がふさわしい、ミクロの宇宙船のような「生命体」がいます。バクテリオファージ呼ばれるウィルスの一種です。「バクテリオファージ」とは、バクテリア、すなわち最近に感染するウィルスということであり、その語源としては「細菌を喰うもの」という意味があります。

バクテリオファージの代表格である「T4ファージ」は6本足で、小型宇宙船のような格好をしています。こういうのが大腸菌にたくさんとりつき、大腸菌が断末魔の叫びを上げて死にゆくさまを想像するとなんとなく背中がかゆくなります。ファージの外観はすべてたんぱく質でできています。

頭部の中にはファージの遺伝情報を載せたDNAが格納されています。さて、ファージが大腸菌に感染するには、まずその表面に取り付く必要があります。ファージはまず、あの気色の悪い「肢」すなわち尾繊維を使って、大腸菌表面に結合します、すると腰をかがめるようにして「肢」を曲げ、基板の下のピンを大腸菌表面委ぐさりと留めます。すると後部には「リゾチーム」という酵素が入っており、これが細菌お細胞壁を溶かします。

そうしておいて尾鞘を縮め、その中に入っているチューブ状の「殻」を細胞壁にぐさりと差し込みます。そして頭部にあったDNAを、細菌の細胞壁へと注入するというわけです。どこから見ても「注射器的」です。必ずしもそのしくみは同じではありませんが、まさに「注射器」の名にふさわしいたんぱく質であるといえるでしょう。