食べ物以外で私たちの身の回りにあるたんぱく質といえば代表的なのは「絹」のたんぱく質でしょう。絹とはつまり、桑を常食とするカイコが繰り出す糸から作られる衣服の材料です。もともとカイコはその糸を使って繭を作り、その中で大きくなって蛾になります。

絹糸の主成分は「フィボリン」と呼ばれる繊維状のたんぱく質です。私たちはじつに、たんぱく質を身にまとって生活し、たんぱく質を商品として、東西貿易の発展を経験してきたのです。絹はカイコの体内に存在する「絹糸腺」の細胞で合成され、分泌されます。合成された「フィブロイン」はゴルジ装置を経て、フィブロインがいっぱいに詰まった「フィブロイン小球」として細胞外へと分泌され、絹糸腺の内部に貯蔵されるが、このときはまだ、絹糸のような繊維状ではなく液状のどろどろ状態となっています。

これが絹糸腺から外へ出て、カイコの体から出されるときには、繊維状の繭糸となって出てくるのです。繭糸は、二本のフィブロイン繊維と、その表面を別のたんぱく質「セリシン」によって覆われた形をしています。また、虫の出す糸といえば、クモの糸を思い出す方もいると思いますが、じつはこれも同じ「フィブロイン」を主成分としています。ただし、種によってはフィブロインのアミノ酸組成は少しずつ異なります。

クモのフィブロインもカイコのそれと同様、グリシン、アラニンおアミノ酸組成が高く、ジョロウグモやズグロオニグモではこの二者だけで過半数を超えるらしいです。