誰にでも「ちょうどいい湯加減」というものがある。ほとんどの人にとってちょうどいい湯加減というのは、だいたい体温よりやや高めの38度~40度くらいであるといわれていますが、人によってはもっとぬるい湯が好きであったり、もっと高い42度くらいの湯を好んだりします。

じつは、たんぱく質にも「ちょうどいい湯加減」というものがあるのです。私たちの体温は37度前後だから、私たちの体内で働くたんぱく質にとって「ちょうどいい湯加減」はやはり37度前後であると考えられます。私たちと違って、変温動物である昆虫のたんぱく質にとっても、やはりその昆虫の「体温」に近い温度がいちばん「ちょうどいい湯加減」なのでしょう。

このように、あるたんぱく質が最も機嫌よく働くことのできる「ちょうどいい湯加減」を、そのたんぱく質の「最適温度」といいます。私たちヒトの体内にある酵素たんぱく質では、最適温度は37度前後です。よく実験で用いられる唾液のアミラーゼなどもそれくらいの温度で最もよくでんぷんを分解します。

そして世の中にはものすごく高温でも生息できる細菌がいます。「熱が好き」なので「好熱細菌」と呼ばれています。もちろんその「好熱細菌」を構成するたんぱく質も高温に強いといえます。そして、世の中には高温のお湯の中に好んで生息する細菌がいると思えば、寒さに強い生物も存在します。北極や南極の海に生息する魚はヘタをすると凍りついてしまうほどの温度で生活しています。

そうした魚から発見されたたんぱく質を「不凍たんぱく質」と呼んでいます。こうした不凍たんぱく質は、南極海の魚類だけでなく、植物や昆虫などからも発見されています。