白内障は眼のたんぱく質が原因で起こることが知られています。加齢性の白内障の原因は、私たちの眼の「水晶体」つまり眼のレンズに存在する「クリスタリン」というたんぱく質の「老化」であると考えられています。私たちのクリスタリンにはαクリスタリン、βクリスタリン、γクリスタリンの3種類があって、水晶体のクリスタリンはこれらの混合物になっています。

このうちβクリスタリンとγクリスタリンが、水晶体の透明度を維持するはたらきを担うのに対し、αクリスタリンはこれらのクリスタリンの形を維持する、すなわち、形がおかしくなったら元にもどす働きをすると考えられているのです。αクリスタリンのこの大切な機能が失われると、βクリスタリンやγクリスタリンの形を維持することができなくなり、水晶体の透明度が失われ、白内障を発症してしまうのです。

じつは、水晶体のクリスタリンは、私たちの体の中で最も寿命が長いたんぱく質で、発生時に水晶体が形成されるとき作られたクリスタリンが、一生にわたって使われると考えられています。つまり他のたんぱく質のように作りかえられないのです。加齢に伴って白内障の発症率が上がるのはそういう理由からでしょう。

このαクリスタリンの祖先は、眼の機能とは何の関係もない「熱ショックたんぱく質」だったと考えられています。水晶体の透明度を維持し、眼をきちんとはたらかせるために、熱ショックたんぱく質の一つを水晶体の形成のために「転用」した結果、αクリスタリンが生まれたのです。