長寿と遺伝子は関係があるのかということもよく耳にします。「長寿遺伝子」というものは確かにありますが、それがあったからといって、長生きできるかどうかはあまり関係がないようです。なぜなら、すべての人がその長寿遺伝子を持っているからです。

そもそも、「寿命を長く保つ」というのは、言い換えると「いかに老化ストレスを回避するか」ということでしょう。長寿遺伝子の名前は、sirt1遺伝子といいます。このsirt1遺伝子から作られるたんぱく質「サーチュイン」は酵素たんぱく質の一種で、相手のたんぱく質から「アセチル基」を取り外す「たんぱく質脱アセチル化酵素」としての働きがあることが知られています。

私たちの細胞の代謝活動に深く関わっているたんぱく質なのです。寿命とは、個体の発生から死亡までの時間を指すのであり、種ごと、個体ごとに違います。

なぜ個体ごとでさえ違うのかといえば、そもそも「寿命」を決める決定的な単独要因はなく、生物は生まれてから死ぬまでの間、さまざまな外的圧力、内的圧力にさらされて生きているわけで、個体の寿命はきわめて複雑で、多くのたんぱく質やほかの分子の間で起こる反応のネットワークの結果として「決まる」からです。

1個の遺伝子だけに左右されるような単純なものではないのです。sirt1はもちろん鍵となる遺伝子であることに変わりはないのですが、あくまでも多くの関係する遺伝子の一つにすぎません。ただ、サーチュインがよりよく働いているかどうかは、その人の栄養状態や環境が深く関わっているらしいことが知られるようになってきました。

遺伝子があるかどうかではなく、たんぱく質が作られてきちんと働いているかどうかが重要ということですね。