酵素とは、化学反応の触媒の役割を持つ物質で、「生体触媒」などとも呼ばれています。そして、酵素として働く物質のほとんどはたんぱく質なのです。生体内では数多くの化学反応が起きています。一つの化学反応にはほぼ例外なく、酵素たんぱく質による触媒作用が認められるので、化学反応の数だけ酵素たんぱく質の種類があると考えてよいです。
したがって、すべてのたんぱく質の中で酵素たんぱく質は非常に多くのウェイトを占めており、全たんぱく質の半数は酵素たんぱく質であると考えられています。例をあげると、消化関係では、でんぷんを分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するペプシン、トリプシン、脂質を分解するリパーゼ、核酸を分解するヌクレアーゼなどです。
細胞の増殖に関わるものでは、DNAを複製するDNAポリメラーゼ、RNAを合成するRNAポリメラーゼ、たんぱく質のリン酸化を行うキナーゼなどがあります。これまでのことから、食物のたんぱく質を消化するのもまた酵素たんぱくな質なのです。化学反応を触媒する働きを持ち、その進行になくてはならないもの。
もし消化酵素が存在しなければ、私たちは食べ物を食べることすらできなくなります。そして、消化され、吸収された栄養分が体内でさまざまな代謝を受け、細胞の活動のためのエネルギーとなったり、体を形作るさまざまな物質を作り出したりするのです。そのそれぞれのステップごとに、実に多種多様な酵素たんぱく質が働いているのです。